MULTOS
銀行が銀行のために設計した、マルチアプリケーション対応の高セキュリティ・スマートカードプラットフォームです。オンチップ仮想マシンと公開鍵方式のセキュリティスキームにより、同一デバイス上で複数アプリケーションを安全に共存させます。試験機材ではなく、検証対象(DUT)側のカードプラットフォームです。
MULTOS とは
スマートカードおよび接続機器向けのセキュリティ技術です。決済、認証、デジタルID、ロイヤルティ、アクセス制御など多様なアプリケーションが MULTOS 搭載チップ上に実装され、カード、ウェアラブル、各種接続機器へ展開されています。決済分野では、複数アプリケーションの安全な共存を前提に銀行が設計した唯一の高セキュリティ・マルチアプリケーション基盤と位置付けられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 区分 | スマートカードOS(カードプラットフォーム) |
| メモリ | 最大 160k |
| 暗号 | RSA / ECC / 3DES / AES / SHA-1 / SHA-2 |
| セキュリティ認証 | Common Criteria EAL6+ High(仮想マシンは EAL7) |
| 対応プロトコル | ISO 7816 / ISO 14443 Type A・Type B |
| 実績 | セキュアスマートカード分野で25年以上 |
| 形態 | カード / パッシブリストバンド / 非接触タグ / アクティブ非接触デバイス |
アーキテクチャ
MULTOS は、アプリケーションを実行するオンチップ仮想マシンと、チップ・アプリケーションコード・アプリケーションデータを保護するMULTOS セキュリティスキームの2つの技術で構成されます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 開発言語 | C・Java(または低水準のアセンブリ言語) |
| 実行形式 | MEL(MULTOS Executable Language)バイトコードへコンパイルし、仮想マシンが実行 |
| 実行時検査 | 不正な命令やメモリアクセスは仮想マシンが拒否し、アプリケーション実行を停止 |
| アプリケーション分離 | あるアプリケーションが同一カード上の他アプリケーションのデータへアクセスすることは不可能 |
| 互換性 | 標準仮想マシンと標準プリミティブ関数群により、ベンダーの異なる MULTOS/MULTOS step/one 製品間でアプリケーションが100%互換 |
| 品質保証 | 全製品が仕様適合と実装セキュリティのType Approvalを受ける |
ALU による安全なロード方式
MULTOS のセキュリティアーキテクチャは、安全でない環境下でもアプリケーションとデータを安全にロードできる点に特徴があります。即時発行、モバイル決済、発行後の更新に適した方式です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 各デバイスは固有のRSA鍵ペアを保持。Key Management Authority(KMA)が生成・証明し、デバイス有効化時に安全にロード |
| 2 | 公開鍵を用い、パーソナライゼーションビューロー等の安全な環境でデータ準備ソフトウェアが Application Load Unit(ALU)を暗号化 |
| 3 | ALU にはアプリケーションコードとパーソナライズデータが含まれる |
| 4 | 対象の MULTOS デバイスのみが ALU を復号できる |
| 5 | 暗号処理はすべてデバイス内部で完結するため、外部暗号装置もセキュアチャネルも不要 |
公開鍵方式のため、対称鍵の共有を必要としません。発行者はライフサイクル全体を管理でき、サプライチェーン管理の強化と総保有コストの低減につながります。
EMV 決済での対応
接触・非接触・デュアルインターフェースのすべてで、主要ペイメントネットワーク(Mastercard・Visa・American Express・Discover・JCB)向けの EMV ソリューションを提供します。
| アプリケーション | 内容 |
|---|---|
| MICA | Mastercard Integrated Card Application。Mastercard Pre-Authorised、CAP(Chip Authentication Programme)、AA4C(Advanced Authentication For Chip)に対応。非接触対応プラットフォームと組み合わせると PayPass とマストランジット機能をサポート |
| VSDC for MULTOS | 最新の VIS 仕様に準拠。非接触・デュアルIFカードで Visa payWave に対応 |
| MULTOS step/one | SDA(静的データ認証)を用いた EMV プログラムの迅速展開向け。低コストな導入起点 |
国内ブランド・付加アプリケーション
国際ブランドの既製アプリケーションと併せて、国内独自の決済アプリケーションを搭載できます。全アプリケーションでのPIN共有といった機能も実現します。
| 地域 | アプリケーション |
|---|---|
| 日本 | JBA |
| カナダ | Interac |
| サウジアラビア | SPAN |
| 韓国 | K-Cash / TMoney |
| 台湾 | FISC |
| フランス | B0’ / Moneo |
| ブラジル | Banricompras |
交通アプリケーションと EMV 決済アプリケーションを1枚の非接触・デュアルIFカードに共存させるマストランジット用途にも適します。このほかロイヤルティ、クーポン、セキュアデータ保存、オンラインバンキングツールなどの付加アプリケーションも同一カード上に展開できます。
その他のカード形態
| 形態 | 内容 |
|---|---|
| ダイナミックCVVカード | カード上に動的セキュリティコードを搭載し、EC・CNP取引の不正対策を強化 |
| 生体認証カード | 生体テンプレートをカード上に保持し、データベース接続なしで1対1照合。カード内で照合を完結する match-on-card 方式 |
| 素材 | 再生プラスチック・木材等のサステナブル素材から、メタルカードまで対応 |
| 非接触デバイス | パッシブリストバンド、非接触タグ、アクティブ非接触決済デバイス |
本サイトでの位置付け
本サイトが扱う製品の多くは検証を行う試験機材ですが、MULTOS は検証される側(DUT)のカードプラットフォームです。Alcinéo の EMV カーネルと同じ「別軸」にあたります。
| 軸 | 該当ベンダー | 役割 |
|---|---|---|
| 試験器 | KEOLABS/ICC Solutions/Barnes/B2 | カード・端末を検証する |
| 認証済みランタイム | Alcinéo | 端末側に組み込む EMV カーネル |
| カードプラットフォーム | MULTOS(本ページ) | カード側のOS |
| 認証ラボ | Bureau Veritas ICTK | 認証を発行する |
Barnes P3 との組み合わせ
Barnes P3 による即時発行(Instant Issuance)構成では、MULTOS カードがカード側のプラットフォームとして使用されます。ALU 方式により安全でない環境でもロードできるため、支店・店頭での発行に適しています。Barnes Smart Solutions は MULTOS Consortium のメンバーです。
| 要素 | 役割 |
|---|---|
| Barnes P3 | 暗号鍵とEMVデータを安全に管理・生成 |
| カードプリンタ | 氏名・番号・セキュアなチップデータをカードへ書き込み |
| MULTOS カード | EMVカードプラットフォーム |
この DUT を検証するには
MULTOS カードそのものや、その上に搭載されたアプリケーションを検証する場合、工程に応じて次の製品をご検討ください。
| 検証したいこと | 該当製品 |
|---|---|
| 発行データ・パーソナライゼーションの正しさ | Barnes CPT 3000v3/CPT 3000v3CL |
| 独自アプリ・マルチアプリの動作 | Barnes CAT 3000v3(Tcl スクリプト開発) |
| ブランド提出前の事前検証 | Barnes 認証テストモジュール |
| RF特性・プロトコル適合(非接触) | ProxiLAB Quest/ProxiSPY Quest |
| 接触プロトコルの解析 | ContactLAB/SPY 3000 |
| 認証取得(試験ラボ) | Bureau Veritas ICTK |
ご確認事項
本ページはメーカー公開情報(multos.com)に基づくカードプラットフォームの概要です。MULTOS カードの調達、対応チップ、アプリケーション開発、ライセンス条件、KMA の運用については、用途をお伺いしたうえで個別にご案内します。なお MULTOS はコンソーシアム方式で運営されており、Mastercard、Discover、Infineon、STMicroelectronics、Thales、IDEMIA、G+D、Entrust、Fiserv、FIS、Barnes Smart Solutions などが参加しています。詳細は multos.com をご参照ください。
