Micropross 製品の EOL と、NFC 試験環境の再構築 ― KEOLABS プラットフォームへの移行
従来 NFC 測定分野で広く利用されてきた Micropross 製品は、NI(National Instruments)による買収後、製品ライフサイクルの終了が進み、新規調達および長期的な保守継続の面で制約が生じています。そのため、新規の NFC 評価・認証試験環境では、継続的な供給・サポート・校正・規格対応を考慮し、KEOLABS 製品を中心とした構成への移行を推奨します。
要点
- Micropross は 2015年に NI が買収し、NI 自体も 2023年に Emerson 傘下に
- NI は 2024年9月に Micropross 製品のサービス依頼プロセスの移管を告知。製品ページには EOL 段階であることが明記され、NI としての新規販売・サービスは終了
- 既存機材(MP300 系ほか)の保守・修理・校正は FIME が公式に継続提供(旧 Micropross の設計エンジニアが対応)。ただし「延命」であって新規環境の前提にはならない
- 置換の考え方は「代替機の購入」ではなく「試験対象ごとの環境再構築」。中核は ProxiLAB Quest/ProxiSPY Quest/SCRIPTIS™+各種テストスイート・アクセサリ
市場背景:Micropross 製品のライフサイクル終了
Micropross は NFC・スマートカード向け測定器のデファクトとして長年使われ、MP300/MP500/CTS(Contactless Test Station)系は多くのラボの標準機材でした。2015年に NI が Micropross を買収し、以降は NI ブランドで提供されてきましたが、NI 自体も 2023年に Emerson 傘下となり、2024年9月には Micropross 製品のサービス依頼プロセスを移管する告知が出されました。現在、NI の Micropross 製品ページには EOL(End of Life)段階であることが明記されており、新規案件で Micropross 機材を前提にすると、調達・保守・校正・修理・ソフトウェア更新の各面でリスクが大きくなります。
「延命」ではなく「再構築」
既存の Micropross 機材については、FIME が MP300 全モデル(C3、CL3、C3+CL3、MX1、MCL1 ほか、ラック・アクセサリ含む)の予防保守・診断・ハードウェア修理・校正・ファームウェア保守を公式に提供しており、旧 Micropross の設計エンジニアが対応します。既存設備の延命は可能です。しかし、今後の規格改訂・新製品開発・ブランド認定を見据えると、EOL 機材を前提にした試験環境を維持し続けること自体がリスクになります。既存環境は「橋渡し期間」と位置づけ、順次 KEOLABS プラットフォームへ移行するのが現実的です。
試験領域別の置換マップ
| NFC/13.56MHz の開発・デバッグ(従来:MP500/CTS 系) | ProxiLAB Quest(PICC/PCD/NFC 信号エミュレータ、VNA によるアンテナ特性評価) |
| 非接触通信のスニファ・解析(従来:Micropross 系アナライザ) | ProxiSPY Quest(アナログ層〜アプリ層の非侵襲トレース)/NomadLAB(フィールド用途) |
| NFC Forum 試験(従来:CTS 系) | ProxiLAB Quest + NFC Forum アクセサリ(Poller/Listener 基準アンテナ・校正キット)+対応テストスイート |
| EMVCo Contactless L1(従来:CTS 系) | ProxiLAB Quest + SCRIPTIS™ Analog/Digital テストスイート + EMVCo アクセサリ(Test PICC/PCD、CMR) |
| ISO/IEC 14443/15693/18092 | ProxiLAB Quest/ProxiSPY Quest + ISO 10373-6/-7 スイート・治具 |
| FeliCa/NFC-F | KEOLABS の NFC-F 対応環境(Sony と KEOLABS は NFC-F テストツール提供で協業実績) |
| ログ解析・相互接続性確認(従来:MPManager 等) | RGPA(Quest Software)/SCRIPTIS™/ProxiSPY 解析環境 |
移行時に混同しないための切り分け
移行は次の3層を分けて設計します。① アナログ/L1 試験(磁界強度・波形・負荷変調・タイミング・共振周波数・Q値など)は ProxiLAB Quest + SCRIPTIS Analog スイート+各規格アクセサリで構成。② デジタル/プロトコル試験(ISO 14443 Type A/B、ISO 15693、FeliCa、NFC-IP1/IP2、NFC Forum Digital Protocol)は ProxiLAB Quest をテスター/エミュレータ、ProxiSPY Quest を実通信トレースとして併用。③ ブランド認定(EMVCo/NFC Forum)は、測定器の保有だけでは完結せず、認定プログラムが認める Approved Test Tools・テストケース版・校正状態が問われます。KEOLABS 機材の導入時も、対象規格・対象製品・必要な認定範囲に応じて最新の認定ツール構成を確認します。
顧客タイプ別の位置づけ
既存の Micropross ユーザーには「Micropross 環境からの計画的な置換」、新規のお客様には「NFC Forum/EMVCo/ISO に対応する最新の評価環境」として提案します。いずれも中核は同じで、ProxiLAB Quest(信号エミュレーション)・ProxiSPY Quest(解析)・SCRIPTIS™(実行環境)に、対象規格のテストスイートとアクセサリを重ねる構成です。開発デバッグ、認証試験、フィールドでの相互運用性トラブルシュートまでを同一ベンダーのツール群で一気通貫に扱える点が、環境再構築の実利です。